事故に遭ったらまず加害者の氏名、住所、電話番号、任意保険加入の有無を確認するのはもちろんのことですが、加害者が勤務中の事故であるかどうかを確認しておくべきです。加害者が対人無制限等の十分な保険金額の任意保険に加入している場合は問題にはなりませんが、任意保険に加入していない場合は、勤務中の事故かどうかが重要となります。なぜなら、勤務中の事故であれば、相手方に資力がない場合であっても、勤務している会社に対して使用者責任(民法715条)を追求できる可能性があるからです。
事故直後、車両が接触した位置、状況を写真に撮るなどして事故態様に関する証拠を残しておきましょう。後になって過失割合が争われる事案の大半は、事故態様が問題になるケースだからです。明白な無過失事故であっても、後になって相手方から真実とは全く逆の事故態様を主張されることも少なくありません。多くの交通事故被害者は、事故直後に相手方が自分の非を認めていることに安心し、それ以上に証拠を残しておこうとは考えません。しかし、事故直後に加害者が自己の非を認めていたという事実は、裁判や示談においてあまり大きな意味を持ちません。客観的な証拠が何よりも重要なのです。そのため、可能な限り事故直後の交通事故現場において、接触した位置などを写真に撮るなどして、客観的な証拠として残しておく必要があるのです。
事故状況の目撃者がいれば、必ず氏名・連絡先等を確認しておいてください。被害者の方は、警察が目撃者と話をしているので大丈夫、と思いがちですが、これは大きな間違いです。警察が目撃者の連絡先を教えてくれることはありません。後日、加害者が起訴されて目撃者の供述調書等が証拠として裁判所に提出されれば、その供述内容を確認することができますが、全交通事故件数からすれば、加害者が起訴され、目撃者の供述調書等が証拠として裁判所に提出されることは稀です。そのため、自分で目撃者の氏名と連絡先を聞き出しておくことが何よりも重要となるのです。目撃者がはっきりと事故を目撃し、明確に相手方の非を述べていたのに、その目撃者の連絡先が分からず、苦しい戦いを強いられるケースも少なくありません。
可能な限り警察が行う実況見分に立ち会ってください。人身事故の場合、警察は事故に関する資料を作成するために実況見分を行い、実況見分調書と供述調書を作成しますが、被害者が救急搬送された場合等、被害者の立ち合いなく、加害者の言い分に沿った実況見分調書のみを作成して捜査を終了してしまうことがあります。裁判は言うまでもなく示談交渉においても、実況見分調書は極めて重要な役割を果たしますので、事故が起こった後、できるだけ早い段階で実況見分に立会いたい旨を警察に申し出ましょう。